2016年2月11日木曜日

BABY RECORDS' 2015 FAVES TOP 30 - Part 2

  世界最遅投稿の2015年お気にいり盤トップ30。後編、パート2だよ。
  パート1はこちら→ BABY RECORDS' 2015 FAVES TOP 30 - Part 1


SUZANNE KRAFT / Talk From Home (LP)

  近ごろはウェブ上でかんたんに試聴できちゃうから、スリルはないがお財布の面ではひじょーに助かる。そんなご時世に珍しくジャケ買いしたのが、梅雨空の街に似合いすぎだったこのLP。なんとなくレイニーなデニム感のイラストにイメージをふくらませ、「さぞ洒落者の女性なんだろうなぁ……」なんて浸っていたら、ディエゴっていうにいちゃん(フェイローズの一員)の変名と知りずっこけたよ。それでもこの淡くメロウなフィーリングは格別。ふたたびグルーミーな梅雨模様の午後、しっとりと聴き濡れたいブルー・アンビエント名演集でしょ。




ましまろ / ガランとしてる (12 inch/CDEP)

  さらにさかのぼって梅雨いり前、空気がゆるみ始めた5月初頭のそよ風にどハマりだった1枚。ザ・クロマニヨンズのマーシーとヒックスヴィルのふたりが組んだ新トリオ、ましまろのデビュー・シングルだ。3人は80年代に新宿ジャムで知り合ったというけれど、ほんと10代終わりの放課後で時間が停止したような、懐かしさとせつなさがもうたまんなくてさ。三多摩エリアに縁のふかい学友とよく遊んだから、マーシーのかもしだすディープな地元感が、なおさらぐっときたりして。夕暮れどきにふと聴きたくなり、夏の入口まで毎日のようにかけまくった大定番。初秋に出たアルバム『ましまろ』もよかったけれど、バディ・ホリー 'Heartbeat' の日本語カヴァー含む4曲に魅力が凝縮された、こちらがお気にいり。曲順ちがいのアナログ皿とCD、どちらも甲乙つけがたし。




MICKEY / Eye Witness (LP)

  そりゃ再生速度をいじってビートやエフェクトを施したリエディット音源なんて、サウンドクラウドにごろごろしているよ。でも、プロモーション用の非売品と念を押しつつもふつうに流通する(笑)、こんな怪しい存在感のパッケイジングに弱いのよ。レーベル名もずばり、レイテッドX。ワシントンDCのブギー探求集団PPU一派のミッキーなる口ひげ野郎が、有名無名問わぬクラシックスをことごとく低速エディットした、鬼凄センスの珍皿だ。決め手は、30年来の大愛聴盤であるラー・バンド "Mystery"(1985年)からニクいところ を選ぶ、A面第3曲 'Don't Break The Shadow of My Love'。2014年ランクいりライラック&シャンペイン 'Shower Scene' に匹敵する、VHS画質なミュージック・ヴィデオまでつくってぬかりなし。年末に出たレイテッド・X第2弾、ローズマリー・クァー(と読むのかな?)"Fantasy" は、輪をかけて初期MTVつけっぱなしのブラウン管フリークぶりで、いまのところレーベル打率10割だぜ。




MILD HIGH CLUB / Timeline (LP)

  先行の7インチからしてデイヴィッド・ピール "Have A Marijuana"(1968年)の引用ジャケで、このプロジェクト名。当然こんな音のゆるみぐあい、というかゆがみぐあいなのね。それでいてバーバンクやミレニアム周辺からメロディックなきらきら感を継承した、ある意味まっとうなカリフォルニア産サイケデリアでもある。そんな方向性と寸分のずれもないルックスの、首謀者アレックスくんは信用できそう。レーベルはストーンズ・スロウ傘下のサークル・スター・レコーズ。汲めども尽きぬここら辺の人脈は、つくづく凄い。
  ちょうど同時期に入手したホームシェイクのアルバム第2作 "Midnight Snack"も、つづけてターンテーブルによく乗せたっけ。これまたすこぶるけだるいホームメイド・AOR集。深夜の入浴前、肩の力を抜くのにうってつけのとりあわせだね。




ORIGINAL LOVE / Lover Man (CD)

  2016年はメジャー・デビュー25周年(もうそんなに経ったのね……)のオリジナル・ラブ。ここ3作はインディ・レーベルからの発表で、前の2作『白熱』(2011年)と『エレクトリックセクシー』(2013年)はD.I.Y.なアルバムづくりが裏目に出たように思え、ちょっと歯がゆい気持ちで聴いていた。どこかチープなプロダクションが、田島さんの高級な音楽性とちぐはぐに感じたというか……。そこにきました、3度めの正直。ひさしぶりの小松さん(ベース)や佐野さん(ドラムス)ら手練のセッションマンをがっちり迎え、ミキシング卓も専任に委ね、ずしりと手応えをとり戻しためくるめくポップン・ソウル集。アイドル・グループ、ネギッコに提供した「サンシャイン日本海」自演版の、絶妙なアズテック・キャメラ配合もごきげん(ひと足先に木暮さんもやっていたけどさ)。すでに4月のイヴェント『ラヴ・ジャム』(ペトロールズセロと共演)と、6月の人見記念講堂の切符はおさえてあるゾ。




ROMAN Á CLEF / Abandonware (CD)

  2014年ランクいりの "Days Of Abandon" の感想に書き忘れたけれど、ザ・ペインズ・オヴ・ビーイング・ピュア・アット・ハートを見直したのは、旧メンバーにアイスクワイアのカート・フェルドマンがいたことも大きい。そしてカートらが組んだ新たなトリオがロマン・ア・クレ(フランス語でモデル小説の意味らしい)。プリファブ・スプラウト路線といえば、最近ではスプラウトレスなんてモロな連中がいるけれど、そっくりさんショウを見ている気分になり、愛聴にまではいたらない。その点、こちらはトリビュートぐあいが微笑ましさにとどまって、じつに好感度高し。電気じかけとの独自配合でさりげなく仕上げてあるから、1985年の "Steve McQueen" 体験には遠く及ばないまでも、デジャヴ交じりの新鮮な気持ちで楽しめたよ。そういえば、2000年代初頭のこの国にスランバー・パーティなんてインディ・バンドがいたっけ。彼らの試みはかなり早かった。




MARK RONSON / Uptown Special (LP+CD)

  マーク・ロンソンにはデビュー以来まるでよいイメージがなく、2015年最大のヒット曲といわれる 'Uptown Funk feat. BRUNO MARS' も「能天気だなぁ」なんて遠目で眺めていた。その認識が変わり始めたのは、4月のどしゃ降りの夜。開館ほやほやTOHOシネマズ新宿でのコンサート映画、『デュラン・デュラン:アンステージド』の鑑賞中だ。ゲストで登場したマークの器用なギターが、意外と憎めなくてさ。よくよく思えば、近年のデュラン・デュランのプロデュース仕事は手がたいし、過小評価だったかもと本人のアルバムを試聴したわけ。はっきりいってブルーノ・マーズの歌声同様に、ソウルな妖しさやるせなさがすっきり抜け落ちた空虚な感覚。でもそんなプラスティックな人工的アミューズメントが、逆に快感だったりして。徹底したフェイク音楽と捉えると、ファンキーありブギーあり、80年代ヒットふうにAORまでとりそろえた、擬似コンピレイションとして満足度高い。夜のビーチの涼風ボッサ的 'Summer Breaking feat. KEVIN PARKER' と、哀愁のアーバン・クルーズ 'Heavy And Rolling feat. ANDREW WYATT' に漂う、ほのかなマイクル・フランクス感が効いているね。




S A L F U M Á N / . . . . (MP3)

  毎日朝晩の2回ほど、サウンドクラウドで新曲をチェックするくせがついた2015年。たいていは徒労に終わるが、ごくたまにすてきな出会いがあるからやめられない。その代表例が、アップする曲どれもがしっくりくるスペインのサルフマン(って読むのかな?)嬢。いまiTunesをチェックしたら、無料ダウンロードぶん含めて23曲入手ずみ。音色といい歌声といい、どこかトロピカルな開放感といい、すーっと心身を潤す不思議な作風は、まるで初期アンテナ初期ナイト・ジュエルの美点が溶けあったよう。グリーンの色調がよく似合うこの6曲いりEPなんて、まさに決定打。ほんとはこのジャケで片面3曲ずつの10インチなんて出してくれたら最高なんだけどねえ。つい先日ラヴ・アワ・レコーズから配信したニュー・シングル "F.M." は、早くも2016年ランクいり候補なのだ。




SEX ON TOAST / Oh, Loretta! (7 inch / MP3)

  メルボルンを拠点とする大所帯ソウル・バンド、セックス・オン・トースト。その名が示すとおり、ひょうきんセンスもあらわにキメるこの9人組の7インチも、やはりバンドキャンプを通じた直輸入ものだ。もしいまの世にアシッド・ジャズの "Totally Wired Australia" なんて編集盤が存在したら(たとえが古いゾ)、必ず1曲収録されただろう正統派スタイル。いっしょに購入したCDアルバム "Sex On Toast"(2014年)もごきげんなできばえだが、よりメロウ好みなこのアナログ皿が、ターンテーブルそばのヘヴィ・ローテイション置き場に長期滞在中なのさ。
  同じく豪州産のバンドキャンプ通販ものでは、アジア系ブラコン娘シュガーズのCDEP "Natural High" もカジュアルにして雰囲気ばつぐん。ソウル心あふれる7インチでは、伊太利亜発のクロスローズ feat. ナターシャ・スプリンガー 'Since I Found You' が、レコード・バッグにかかせないキラー名曲だ。




新川忠 / Paintings Of Lights (CD)

  2015年前半、もっともよく聴いたアルバムかもしれない。10年以上もキャリアがあるのに、寡聞にして知らなかった東京の才人SSWのアルバム第3作。ともするとヴィヴィッドな原色をバケツツールでどばっで済まされそうになるエイティーズの、淡く風雅な水彩画的一面をそっとすくいあげ、上等なポップスにしたてるコンセプトと実力にうなったね。線は細めながら透明感をたたえる歌心は、グリーン・ガートサイドにも通じる甘さと深みあり。インタビュー記事を読んだら、かつてお姉さんが聴いていたアーハスクリッティ・ポリッティレヴェル・42あたりを念頭においたとあり納得。ひょっとしてその姉上、同い年ぐらいじゃないかな。さらには曲テーマにカミーユ・クローデルを持ってくる感覚ね。レーベル・サイトのアルバム紹介に、大貫妙子の「ベジタブル」なんてキーワードもあり、なるほど忘れかけていたゴッサマー・グリーンな清潔感が、ありありとよみがえるわけだ。




SOGGY CHEERIOS / Eals And Peanuts (CD)

  1959年生まれということは、ちょうど10歳年上なんだよね(たしか小西康陽さんも同じ)。諸兄がレコード・デビューした80年代半ば、こちらはちょうど高校生でさ。かれこれ30年以上、レコードや音楽にむちゃくちゃくわしい年長者として、勝手に頼もしく感じていたりして。“エヴリデイ・ソングブックス”と題し、惣一朗さんが月いちでタンブラーに挙げる10枚も、「なるほどいまはこんな感じかあ」なんてうれしく参考にしているしだい。
 そして、おふたりの出身地の名産品をならべた題名からして傑作の、2年ぶりアルバム第2集。名コンビぶりはより親密さを増し、アイディアをキャッチボールする高揚感が心地よく伝わる。ヴォーカル・ハーモニーをさらに充実させた、70年代原体験組ならではの細やかなポップ・センスに脱帽。さりげないほどに染みる、日本語ロックの精髄なり。




TRIPTIDES / Azur (CD)

  すかっと胸をすくサンシャイン・ポップを奏でる、L.A.のインディ4人組。すでに5年以上のキャリアがあるらしいけど、フランスの新鋭レーベルから出たこのアルバムで初めて知ったんだよね。過去作のアートワークを眺めてもビーチ&プール度数高く、陽光ふりそそぐカリフォルニアの風土に意識的な確信犯とみた。寒さにめっぽう弱い夏好きとしてはぐっとくるほかなしの、甘く儚きライト級サイケデリアなのだ。リヴァーブのかかりぐあいも、ゆらゆらっと快適。ときおり訪れるティーンエイジ・ファンクラブザ・スミスな瞬間にも、素直に好感持てちゃうんだな。スロウ&メロウな第4曲 'Not Mine' は、わがサマー・クラシックスの仲間いり。




TUXEDO / M+M Mixes (12 inch)

  なんかちょっと優等生っぽすぎるのかなあ。なぜかダイレクトに迫ってこない、メイヤー・ホーソーンのソウル・ミュージック。たとえば2013年の12インチ 'Her Favorite Song' は、最初オリヴァーによるリミックス版にぐっときて入手。そこから徐々にオリジナルのよさがわかってきたりしてね。タクシードの場合も、大好物なスタイルのはずなのに、惜しいところでのめりこめない一線を覚えるのだ。どこかこぢんまりというか、上品にまとまったミキシングが障壁なのかな。だってベテランのディスコ職人ジョン・モラレス手がけるこのリミックス皿には、夢中になれちゃったもの。確実にずるむけ度倍増して、心置きなくダンスできちゃうってわけ。そんな好みの相違はあれど、メイヤーくんが気になる才能であることにちがいなし。




BRIAN WILSON / No Pier Pressure - Deluxe (CD)

  "That's Why God Made The Radio"(2012年)や千葉ロッテ球場公演こそすばらしかったが、ソロでは企画盤がつづいたブライアン。ガーシュイン名曲集にとまどって、ディズニーのやつにはとうとう手が出なかったもんなぁ……。ようやくオリジナル曲をとりそろえ、すかっとビーチに返り咲く待望作だ。若手レーベルメイトを招いた4つ打ち仕様 'Runaway Dancer feat. SEBU' はご愛嬌ながら、やはり真性カリフォルニア・ミュージックの魔法には抗えない。名ホーン奏者との意外な好相性 'Half Moon Bay feat. MARK ISHAM' に心解きほぐれ、かのインスト名曲 'Summer Means New Love'(1965年)に歌詞がついた 'Somewhere Quiet' で永遠の夏が胸にきざまれたよ。




YOUNG GUN SILVER FOX / West End Coast (CD)

  ショーン・リートーキン・ラウド期から追っていて、'Happiness'(2000年)なんか永遠の名曲だし、アンディ・プラッツ率いるママズ・ガンのことも、ちょっと大味ながらも光るポップ・センスに感心していた。そんな両者がデュオを組み、棕櫚のそそり立つウェストコースト・サウンドに挑むなんて、思いもよらなかったよ。欧米でネッド・ドヒニーが再評価されるAORへの順風にタイミングよく乗り、初期アサイラム・レコーズ直系路線ときたもんだ。プレイヤードゥービーズあたりをちらりと織りこみながらも、今日的に更新する耳心地は、古典的アレンジ研究に余念のないリーと、ロックン・ソウル道を邁進するプラッツの面目躍如。クール・アンクル "Cool Uncle" と並び末長くつきあえそうな、2015年AORの最高峰だゾ。




   それにしても遅くなっちゃった……。あとは残すところ、お気にいり“再発盤&発掘音源盤”のトップ10のみ。数日のうちに投稿を済ませ、いまさらながら2015年をしめくくろうと思います(笑)。