2016年2月11日木曜日

BABY RECORDS' 2015 FAVES TOP 30 - Part 1

  われながら、とんだ呑気者でございやす。年末に選び終えたものの、感想コメントに手間どるうちに、2月も早や2週め……。おそらく世界最遅(笑)発表の2015年お気にいり盤のトップ30だよ。
  いつもどおりトップ3だけをきめ、あとはアルファベット順。タイトルうしろのカッコ内は所有しているフォーマット。それぞれに感想コメント、ジャケット(もしくはレーベル部分)写真をつけ、YouTubeやSoundCloudで聴けるものは貼っておいたゾ。
  ページが重くなるので記事をふたつに分けた前編、パート1からどうぞ。


☆第1位
MOCKY / Key Change - Deluxe Edition (2CD)

  出会いのきっかけとなったへんてこ12インチ "Me-so-funky"(2001年)から早14年。その間いちどたりとも期待を裏ぎらないモッキーの、お待ちかね最新アルバムが第1位だ。名盤 "Saskamodie"(2009年)の延長線上にあるインスト多めの独特ソフト・ソウル・スタイル(口笛いり)が、ぐんと深みを増したずばり最高傑作。聴くたびに胸がしくしくっと疼くほどの名曲 'Weather Any Storm' の美しさときたら! よりたおやかで開放的なフィーリングには、やはり新天地L.A.の環境も大きく作用したのかな。虫眼鏡で老眼を凝らせば、クレジットにモーゼズ・サムニー(EP "Mid-City Island" が2014年ランクいり)の名前もあるもんね。
  そしてついに実現した10月の初来日ツアー(招聘したウィンドベルの富田さんに感謝)。自作曲 'Inside Voice' の歌心で会場を陶然とさせた鍵盤のジョーイ・ドシックという才能の発見も含め、これまたすばらしくごきげんなステージだった。帰りがけに同じく来日中のアダム・ベインブリッジ a.k.a. カインドネスの姿を見かけたが、ごく自然に客席をダンスフロア化させる技量や資質という点で、1月に観たカインドネス公演との共通性、同時代性がうかがえたのは興味ぶかし。けっきょくそのふた組が、2014年と2015年の当チャート首位というのにも、うなずけたりするわけさ。




☆第2位
JAM CITY / Dream A Garden (LP)

  お皿を手に入れたのは、なんとデビュー・12インチ 'Magic Drops'(2010年) 以来のジャム・シティ。しばらく聴かぬ間にめざましい成長を遂げてびっくりのアルバム第2作だ。だってインクの "No World"(2013年ランクいり)と並んで賞したくなるほど、空漠としたメロウネスとメランコリアに覆われたアトモスフェリックなR&B路線なんだもの。とはいえ、曇り空をぼんやりと仰ぐスロウジャムのインクに対し、こちらは同じ空気を肌で感じながらも、じゃりっとアスファルトを踏みしめるウォーキング・テンポ。インダストリアル路線の延長で打ちつけられる粗いビートは、まさに不穏な時代の脈動。南ロンドンの多感な青年が鬱屈と希望に揺れながら彷徨する、都市のサウンドトラックといった趣が、ひりひりっと皮膚感覚でリアルに迫るのさ。




☆第3位
CHLOE MARTINI / Private Joy EP (12 inch/AAC)

  とにかく真夏の夜にヘヴィ・ローテイションしまくった、(リリース時点で)弱冠18歳というワルシャワ娘の4曲入りEP。サウンドクラウドのタイムラインに流れてきたとたん、ぐっときまくり即AACのデータを購入。追ってフランスのレーベルから出た12インチ皿も、迷わず手に入れちゃったわけさ。なかでも 'Get Enough feat. ALYSS' は、新人賞どころか年間ベスト・ソング賞を差しあげたいほどの名曲でしょ。せつなさと爽快感がないまぜになった、このフィーリングはちょっと凄い。80年代ブラコンのクリシェをさらりと瑞々しく更新してみせる、破格のプロデュース力なのだ。今後ぐんぐん浮上するにちがいない稀有な才能だゾ。




ここからはアルファベット順だよ。

ASO / Love Journey (MP3)

  「いつかはその気になるでしょ」なんてのんびりかまえ、あえて距離をおいてきたバンドキャンプとサウンドクラウド。それが前年あたりからおのずと利用する機会が増え、2015はようやく自分にとっての元年といえるほどにチェックするくせがついた。新手のメディアが自然と身につくのに、どうも時間がかかる性分なのね……。
  そこで数えてみると、バンドキャンプでは1年間で計36タイトルを購入(コレクション一覧をご参照のほど)。割高ながらもフィジカル版を選ぶのは、やはりお皿世代の哀しい性。そんななか、データ配信のみでめろめろメロウな気分に浸らせてくれたのが、サンフランシスコの制作集団メロウ・オレンジの一員、アソーのジャジー・ビーツ集なのだ。雨に濡れたガラス越しの灯りそのままのたまらんムードが、夕食の皿洗いをする午後9時台になぜかフィット(笑)。いち日をしめくくる手前のひとときに、やわらかなトーンが安堵感をもたらすわけ。全22曲収録で、ここまで粒ぞろいなのも珍しい。




BADBADNOTGOOD / Velvet (7 inch)

  前年の第3位に入ったムーンチャイルドの傑作セカンド "Please Rewind" は、このたび晴れて英国ブライントンのトゥルー・ソウツから新装再発売。流通網がぐんと拡がり、めでたしめでたし。と同時に自主製作盤のほうはバンドキャンプからひっこめちゃったご様子。本国ではジ・インターネットと秋のツアーを回ったそうで、なんともうらやましい組み合わせじゃないの。
  2015年もここら辺の新しいジャズをほんのちょっとだけつまみ食い。とりわけバッドバッドノットグッドの7インチと、年末にCD化されたサンダーキャットのEP "The Beyond / Where The Giants Roam" の2枚はしっくりきた。しかし両方を残す余地がないので、ここではインターFM『モーニング・グルーヴズ』でふいにB面 'Boogie No.69' が流れた、4月の昧爽どきの快さを重視。腕っこきお坊っちゃまトリオの前者を選んだ。メロウ好みな2曲入りっていう、ドーナツ盤のコンパクトさがまたいいんだな。




BLUE JEAN COMMITTEE / Catalina Breeze (one sided 12 inch)

  秋に "Gentle And Soft: The Story Of The Blue Jean Committee" というモキュメンター番組も制作されたというのに、残念ながら日本国内じゃ観られないようなんだな……。そもそもはSNLから飛びだした、いわばザ・ラトルズスパイナル・タップの70年代西海岸ロック版(設定上はマサチューセッツ出身)。なんとアナログのレコードまで出してくれちゃって、このジャケだもんねぇ(笑)。イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリーというか、ヴードゥリス&カーンというか、ブラウンスミスというか……ウェストコースト/AOR派にはおなじみの様式でございます。しかもタイトル曲 'Catalina Breeze' を聴いたら、ふつうにぐっとくる名曲だからうれしいじゃないの。YouTubeのコメント欄に「ポコパブロ・クルーズリトル・リヴァー・バンドあたりを思いださない?」なんてあったけど、まさにその感じ。おまけに笑えるってのが最高。
  片面プレスの7曲入りで、およそ10分強という収録時間。そこにぎゅぎゅっとエッセンスを凝縮してあるから、意外やもの足りちゃうのが不思議だな。じつは2014年の時点で7インチ 'Massachusetts Afternoon' を出していたと知り、そちらもあわてて入手。ともあれこんなの出しているドラッグ・シティはえらい!




THE BREEZE / Cocktails By The Pool (12 inch)

  こちらはサウンドクラウド経由で知った、ベタなプールサイド書き割り感が最高なリエディット皿。だってこの名前に、このアートワーク。「BREEZEが心の中を通り抜ける」を地でいく、80年代後半FMエアチェック気分がたまらん4曲いりだ。バレアリックと呼ぶには都会のオアシス度高い、なんとも微妙なクワイエット・ストームぐあい。つまりは購入先であるハンブルクのオンライン店、グローイング・ビン・レコーズの主人バッソが提唱し同名コーナーも設けるナウい感覚、“カクテルズ・バイ・ザ・プール”を具象化した1枚なのね。なかでも 'Mischivous Whispers' は、第3位のクロエ・マルティーニ 'Get Enough feat. ALYSS' と並ぶ、うだる真夏の夜のヘヴィ・ローテイションなり。




GEORGE CLANTON / 100% Electronica (LP/MP3)

  これまたバンドキャンプ経由で本人から通販入手した、自主製作の限定アナログ皿。セルフィーのジャケに躊躇なしのヴェイパーウェイヴ的意匠をまとう、ブルックリン在住20代青年が奏でるシンセポップに、なぜかブラマンジェOMDが大好きだったころの懐かしい感覚がよみがえってきてさ(笑)。歌いかたがまたいかにもエレクトリック様式で、いわばナウさと懐古の狭間で宙ぶらりんの快感。当のジョージくんからすれば心外な誤解かもしれないが、かつて夢中になった80年代組の新作を聴いても、ここまでフレッシュな浮遊感は味わえないもの。ホワイト・レーベル盤にぺら1枚のアートワーク、ステッカーのおまけつきという、家内制ふうチープ仕様もやけにそそるのだ。




COMPUMA feat. 竹久圏 / Something In The Air - The Soul Of Quiet Light And Shadow (CD)

  コンピューマこと松永さんが、京の老舗茶問屋宇治香園から創業150年ノベルティCDを依頼され、その流れで相棒に圏ちゃんを迎えての初ソロ・アルバムづくりに発展。緑深い茶園で現地録音した素材を、電子じたての快音とともにスタジオ精製したアンビエント作品なんて、もう最高にきまっているでしょ。お茶でほっとひと息をつく至福にすばらしく同調する、五感を通じたトリップからの純粋なアウトプット。飄々と渋いふたりの個性が浄らかなアンビエンスからこぼれ、静けさに魂が宿るんだよね。




COOL UNCLE / Cool Uncle (CD)

  ベテラン勢の確立した作風に新たな息吹をもたらした、ジェフ・リンドン・ウォズの80年代後期仕事を思いだしちゃった。ミスターAORことボビー・コールドウェルと、ヒップ・ホップ世代の名制作者ジャック・スプラッシュ。親子ほど年の離れた両者が、マイアミつながりで巡り合い、オーソドックスとコンテンポラリーのスタイル融合を図るプロジェクトのデビュー作だ。ソウルフルなAORでありながら、路上に根ざしたR&Bとしても受けとめられるリアルなビート質感は、かつてない妙味。CD時代以降のコールドウェルで、こんなに自然に体が揺れるアルバムはなかったもの。メイヤー・ホーソーンジェシー・ウェアシーロー・グリーンら客演勢も適材適所で、今後の規範にすらなり得る大成功コラボレイションだよ。国内仕様のアートワークはそっけないから、目玉ジャケの本国盤で入手。




DÂM-FUNK / Invite The Light (3LP)

  お気にいり曲のYouTubeリンクをひんぱんにツイッター投稿する、ごぞんじデイム・ファンク氏。かつてウェストサイド・コネクションのプロダクションに関わった西海岸ファンカーが、いまやプリファブ・スプラウトに心酔しているとは、さすがわかっていらっしゃる。なんたって、初期シングルのみ収録のマイナー曲 'Spinning Belinda'(1984年)までチェックしているからさ。
  とはいえ、いきなりがつんときたデビュー・シングルB面 'Galactic Fun'(2008年)に匹敵するお皿はなかなか出してくれず、ちょいとやきもきしたところに会心のセカンド・アルバムだ。ゆる~りとグルーヴするミッドテンポ中心というのがうれしい堂々の20曲。銀ぴか3面開きスリーヴ、白ヴァイナル3枚組の豪華仕様がお似合いだし。ジュニー・モリスンリオン・シルヴァーズ3世&4世(!)に、アリエル・ピンクが並ぶゲスト人選がイカすねどうも。




ECD / Three Wise Monkeys (CD)

  ぼちぼちとデモに出かけているここ5年ほど、いつもお見かけするから勝手に親しみを覚えちゃったりしてね。そしてたまたま観ていた、9月あたまのドミューンのSEALDs特番。スタジオ・ライヴで披露された4曲が圧巻でさ。発売後すぐに買って聴いて、さらにぶっとばされちゃったわけ。年1枚ペースを保ちつつ、いつにも増して凄まじくドライヴする通算第17作。やりきれない日常や路上のプロテスト直送で明瞭に打ちつけられる言葉の連なり、ひらめきと熟練が相乗する不敵な面がまえのビートにつくづく釘づけだよ。ラジオで安倍の国会答弁が流れたりすると、虫酸が走ってげんなりしがちな日々。そこでびしっと尻を叩いてくれるのが、この比類なきカンフル剤的アルバムさ。毎度のことながら石黒くんのデザインも最高。




THE INTERNET / Ego Death (CD)

  "Purple Naked Ladies"(2012年)に "Feel Good"(2014年)、そしてこのアルバムと、3枚連続で年間トップ30いりを果たしたジ・インターネット。大好きなんだよねえ。実質はバンド編成だった前作の時点でも、当初のふたり組だった印象をひきずっていたけれど、集合写真ジャケでどーんとイメージ刷新。基調となるメロウなテイストは不変の好演ぞろいで文句なしだ。でもまだ新しい4人の名前をちゃんと覚えられないんだな……。
  ところでこの投稿が大幅に遅れたから、すでに今年1月の初来日公演(恵比寿リキッドルーム)を観たあとなんだけどさ。ギターのスティーヴ(現役高校生)は不在の5人編成。どたばたと手数多めのドラム担当クリストファーと、Tシャツを脱いで弾けまくった鍵盤奏者ジャミール(サンダーキャットの弟)の躍動が印象ぶかし。クールな3人との対比もばっちりで、気持ちよくバランスのとれた“バンド”として惚れなおしたよ。
※ファーストおよびセカンドの題名うしろの括弧内は、ディジタル配信ではなくCDの発売年。




SUSAN JAMES / Sea Glass (CD-R/MP3)

  またまたバンドキャンプ経由で通販した自主製作CD……というか、よく見るとCD-Rなんだけど、ブックレットもついた見開き紙ジャケのパッケージはしっかり。編曲と鍵盤でショーン・オヘイガン(ザ・ハイ・ラマズ)が全面参加というので試してみれば、予想以上に豊かな響きのカリフォルニア産オーケストラル・フォーク・ロック集で、即愛聴盤の仲間いり。片隅にワーナー・ブラザーズのロゴがついていたって不思議じゃない、実力派女性SSWの隠れた名盤だと思う。もっと評判を呼んでもよいはずだ。第1曲 'Poseidon's Daughter' のすばらしき生演奏動画も必見。




KODE9 / Nothing (CD)

  2009年あたりからつづいたダブステップ熱はだいぶ沈静化。多様化と枝わかれで追えなくなっているという話もあるけどさ……。名門ハイパーダブにひいきのお皿は数あるものの、主宰者であるコード9博士の作品はなんと初購入。よき相棒のザ・スペイスエイプが亡くなってどうくるかと聴いてみりゃ、第4曲 'Holo' で飛びだす水晶のごとき一瞬のきらめきにやられた! イエローマジック歌謡/¥ENレーベル派におなじみ“あの曲”のサンプルに意表をつかれ、さすがの審美眼にうなるほかなし。深遠な音楽的素養を溶かしこむクリアかつミニマルな音響工芸でありながら、強靭なバネの効きでグルーヴを途切れさせぬ、みごとな単独名義初アルバムだ。




☆パート2(後編)→ "BABY RECORDS' 2015 FAVES TOP 30 - Part 2" につづく。