2016年2月18日木曜日

BABY RECORDS' 2015 FAVES TOP 10 - Reissue and Unreleased

  世界最遅発表の2015年間チャートしめくくりは、お気にいり“再発盤&発掘音源盤”のトップ10。近ごろは新作や中古盤にかまけて、再発盤にまでなかなか手がまわらないのが正直なところ。それでも鬼凄いのからちょい気のきいたところまで、なかなかのラインナップと出会えたよ。

  新作音盤編↓
BABY RECORDS' 2015 FAVES TOP 30 - Part 1
BABY RECORDS' 2015 FAVES TOP 30 - Part 2  
  映画編↓
BABY RECORDS' 2015 FAVES TOP 10+5 - Films


☆第1位
坂本龍一 / 音楽図鑑 --2015 Edition-- (2CD)

  不朽の名盤『音楽図鑑』(1984年)のリリースが高校1年生の秋。翌年の「フィールドワーク」と「ステッピン・イントゥ・エイジア」は、それぞれが忘れえぬ想い出と密接にからみ、購入日の情景まで覚えている。そこからの『未来派野郎』(1986年)、初のソロ・ツアー『メディア・バーン』東京公演という一連の流れは、わが10代音楽体験のハイライトのひとつだからさ。オノセイゲン氏のリマスターというだけでうれしいのに、なんと未発表音源集との2枚組仕様! はちきれんばかりに期待をふくらませ、発売当日にタワーレコード渋谷店で入手したよ。
  気になるディスク2には、かつてなけなしのこづかいをはたき観まくったVHS "Tokyo Melody"(1985年)でおなじみ“あの曲”や、NHK FM『サウンドストリート』のテーマも含む12曲を収録。ほとんどが完成途上の音源だから当然とはいえ、想っていたよりずっと素朴な印象だ。達郎さんや美奈子さんのコーラスが生々しくフィーチャーされていたりと、セッションの進化過程がじつに興味ぶかく、『キーボード・マガジン』特集号片手の愉悦に浸ったものさ。教授のインタビュー記事にはボックス・セット案も出たとあり、「買ってくれるのは30人くらい」なんて謙遜しているけど、ばっちり需要あるでしょ。ともあれファンとしては、療養からの復帰がなによりの喜びだ。




☆第2位
DANNY JAMES / Pear (LP)

  2014年の当チャートにランクいりした、ワンス&フューチャー・バンドの12インチ "Brain EP"。その感想コメントで触れた「メンバー出演YouTube動画の、24秒あたりから流れる謎の曲」の正体がついに判明だ。なんてことはない、中心メンバーのダニーがカセットで出したソロ・アルバム(2013年)収録曲 'Tight Lipped' だったわけ。バンド本体よりもAMラジオなポップ感覚が全編で炸裂。アナログ再発にあたっての新装スリーヴがまた最高。題名は洋梨なのに、なぜ青りんご……とお思いでしょうが、VU&ニコの 'PEEL SLOWLY AND SEE' のごとく記された 'Pull Here' に従い、りんごのつる部分をひっぱるとあ~ら不思議。にょきにょきっと伸びて梨のかたちに早変わりという、ギミック仕様なのだ。中身もパッケイジもすこぶる楽しい、カリフォルニア産サイケデリック・ポップの快盤なり。




☆第3位
LION & THE LAMB / Lion & The Lamb (LP)

  かつて日本盤LPも出ていた名バンド、ラヴァのアルバムをたてつづけにCD再発し急浮上する、地元ノルウェイ産AOR専科プリザヴェイション・レコーズ発。新譜のほうのチャートで選んだ架空のウェストコースト系デュオ、ブルー・ジーン・コミッティの世界を地でいく、オスロの知られざるふたり組ライオン&ザ・ラム唯一のアルバム(1978年)だ。ソフトでジェントルで爽やかなスタイルは、夏の早朝カーテンを開けた直後にお似合いの定番だった。'My Morning Sun' なんて曲もあるもんね。1~2分台の曲が多めで、もうちょいたっぷり聴きたい気がするが、さらっと聴き終えリピートするもいとをかし。アナログ盤のみでの再発は、収録時間の短さゆえかな。オリジナル盤と異なりナウいロゴをあしらった新装ジャケも、なかなか好感持てちゃう。CD再発が予告されているウェストポイントの1983年盤 "Face To The Sea" も楽しみなのだ。




ここからはアルファベット順だよ。

COOL CREATION OF ST. MAARTEN / Nighttime On The Beach Island (7 inch)

  ちょいと値がはるとはいえ、なかなか気のきいた7インチが続々再発の現状には、うれしい悲鳴が出ようってものさ。そんな2015年代表例が、大好きなウェルドン・アーヴィンの 'I Love You'。でも曲じたいは有名だから、ここでは同じくエディンバラのアセンズ・オヴ・ザ・ノースから出た、無名ローカル・バンドの1977年プエルト・リコ録音を選ぼう。歌ものモダーン・ソウルのA面 'Wish Upon Love' もすてきだが、波音に導かれるB面インスト曲 'Nighttime On The Beach Island' の、甘くやるせない深夜ビーチの涼感にもう骨ぬきなのさ。




EVERYTHING BUT THE GIRL / Temperamental (2CD)

  EBTGのデラックス2枚組シリーズが、ついに完結。4年をかけて9枚のオリジナル・アルバムが出そろった。ベンとトレイシーが関わった中身の充実はもちろんのこと、統一デザインのハードカヴァー仕様でCD棚の並びもばっちりさ……でもあれ? うっかり寸法を誤ったのか、2015年リリースぶんのラスト2作だけは5mmばかり背が高い(笑)。"Eden"(1984年)のときは 'Mine' の不完全ミックス(リード・ギターぬき)を入れちゃったミスもあり、若干詰めは甘いが愛すべき企画だったね。記念にここでは1999年の最終作を挙げよう。リアルタイムでは前作 "Walking Wounded"(1996年)ほど回数聴かなかったが、やはりクラブ・ミュージックの季節をふまえた名演ぞろい。音づくりは様変わりしても、デビュー時からの一貫した表現姿勢をびしっと示した、有終の美といえる逸品だ。早くも完成したベン・ワットのソロ新作 "Fever Dream" は、きたる4月のリリース。




VELLY JOONAS / Stopp, Seisku Aeg! (7 inch)

  ひょっとして北欧エストニア製のお皿を買ったのは初めてかな。かの地の埋もれた未発表音源をアナログ盤でよみがえらせるフローティ発。質素なルックスながら、じつはエストニアのソウル・ミュージック史における重要人物という、ヴェリーさんの蔵出し2曲いりだ。両面ともに、有名ヒット曲を母国語で歌うカヴァー・ヴァージョン。A面がフリーダの 'I See Red'(1982年)で、B面がロバータ・フラック 'Feel Like Makin' Love'(1974年)なんて、洒落ているじゃないかい。耳慣れぬエストニア言葉が、なんとも初々しくエキゾティックなのね。




MIKE LUNDY / The Rhythm Of Life (LP)

  第3位のライオン&ザ・ラムを出したオスロのプリザヴェイション・レコーズとともに、現地ならではのダイレクトさを売りにする新進気鋭レーベルが、ホノルルのアロハ・ガット・ソウルだ。ついに出たって感じのコンテンポラリー・ハワイアン専科が12ページのブックレットつきで新装再発するは、白黒イラスト・ジャケで知られるマイク・ランディの1980年粒ぞろいソウル名盤。2003年にAORの伝道師こと中田利樹氏のクール・サウンドからCD化されたけど、アナログ皿は待望だもんね。
  そしてこのたび、ロンドンのストラット・レコーズがアロハ・ガット・ソウルと組んで出すのが、ここら辺をまとめた過去最強の編集盤 "Aloha Got Soul - Soul, AOR & Disco In Hawai'i 1979-1985"。うーん、この選曲はちょっと凄い。早くも2016年版の当チャートいりは確実か。ここ数年でも、ロブ・メールルイババドゥハル・ブラッドバリーなんてところまでCD化され、モンド本や『レコード・コレクターズ』誌の特集に原稿を寄せたころとは隔世の感ありだよ。




THE SPECIAL AKA / In The Studio - Special Edition (2CD)

  つぎつぎとくりだされて財布が追いつくはずもない、想い出名盤の拡張版リイシュー。ぜんぶそろえたEBTGなんかは稀なケースで、入手は愛着の度合いや曲目の充実度、あるいはパッケイジの魅力しだいとなる。そこで、高2の夏休みに宿題をやりながら聴いたこのアルバム(笑)。アナログ盤時代から数えて5回めの購入だから、われながらよっぽど好きなのね。まずはこのカラー写真ジャケにやられて、ディスク2にはシングル・オンリー曲にピール・セッションズ、インスト・ヴァージョンと、いたれりつくせりで文句なし。しかし 'Racist Friend' の歌詞がこんなに響くご時世になるとはねえ……。例の怪しい7インチも買っちゃったけど、ダマーズ師匠のまとまった新作は気長に待とう。そして年末に亡くなったブラッドバリーさん、すかっとタイトなビートをありがとうございました。




UNIVERSAL TOGETHERNESS BAND / Universal Togetherness Band (LP)

  毎年必ずひとつはランクいりする、シカゴの名門ヌメロ・グループのひと味ちがうお仕事。扱う音楽の幅がますます広がってるうえに、新譜と中古盤にかまけがちというこちらの事情も重なり、なかなか追えなくなってきている。ザ・ロイヤル・ジェスターズの甘くせつなきチカーノ・ソウル集は後回しのままだし、ロブ・ガルブレイスの未発表音源集なんて、4タイトルまとめて送料込み$150のセット販売のみで手が出ない……。そんな現状でかろうじて入手したのが、伝説のローカルTV番組『ザ・シカゴ・パーティ』にも出演したソウル・バンドの1枚。アルバムぜんたいは少々元気よすぎの感あるが、リリースに先がけサウンドクラウドで聴けたA面第4曲 'My Sentiment' のさわやかメロウネスが気にいってさ。きたる3月には、グラム・パーソンズが提唱した“コズミック・アメリカン・ミュージック”ずばりのすてきなお皿ネオンなジャケもイカす)が待機して、2016年も懐ぐあいが悩ましくなりそうだ。




VARIOUS ARTISTS / Blue World - Music For The Lonely Hours (10 inch)

  いつものように街のレコード屋を回っても、滞在時間はけっして長くないジャズ売場。好きなお皿はざくざくのはずなのに、他の興味を優先するうちに、余力がなくなっちゃうのね。そこにこんなカジュアルな10インチがひょっこり現れて、思わず飛びついちゃった。50年代ジャズの粋なレーベル、ベスレヘム・レコーズの音源から、ひとりきりの時間というシテュエイションに合わせて選曲。いずれも曲名に 'Blue' という単語を含み、しっとりと浸れる6曲いりなのさ。裏面にライナーノーツを記した古典的なジャケながら、映るモデルはいまどきの女性だったりして、さらっと気軽なパッケイジングに惹かれたよ。それもそのはず、ヴィンテイジ様式を得意とするグラフィック・デザイナー、ジョン・セラーズがこのたびサンデイズド傘下で始めたレーベル、アーカイヴズ・オヴ・アメリカの初作品なのだそう。すでに夜をテーマにした続編 "Serenade: Night Ballads From Bethlehem" が出ていて、コレクタブルなシリーズとしても気になるね。




  いやはや、やっと2015年をしめくくれたよ。小学生にたとえると、夏休みの宿題を運動会の後に提出し終えた感じでしょうか(笑)。2016年ぶんは早めの準備を心がけるゾ。