2015年1月6日火曜日

BABY RECORDS' 2014 FAVES TOP 10+5 - Films

 さてと、2014年のお気にいり映画の年間チャートだよ。1月2日のブログ記事『2014年に劇場で観た映画』に挙げた全作品より、新作映画のトップ10と旧作映画再上映/初上映のトップ5。まずは“新作映画”のほうからどうぞ。 


☆第1位
ジャージー・ボーイズ

 見事な音楽映画だった。むだなくテンポよく、それでいてなめらかな展開のなかで、うっとり酔わせて、きっちり笑わせ、じんわり泣かせてもくれる……とにかく手堅い。クリント・イーストウッド監督が職人気質といわれるゆえんだね(これまたがらりと変わる最新作『アメリカン・スナイパー』も楽しみ)。また、かれこれ四半世紀ほど前に、ザ・フォー・シーズンズの音楽を知っておいてよかったなとも思う(ブログ記事 "Lil' Bit Of Gold" をご参照のほど)。胸に迫る度合いがちがうはずだからさ。'My Eyes Adored You' であんなにぐっとくるとは思わなかったけど。そうそう、クリストファー・ウォーケンの演技も傑作だったねえ。




☆第2位
ウルフ・オブ・ウォールストリート

 『ジャージー・ボーイズ』の出現まで、1月末から8ヶ月間も首位を独走。そういや、開巻劈頭スクリーンの向こうから話しかけてきたのはこちらも同様(第4の壁を破るってやつ)。いやはやすっかり圧倒されたし、にやにやとくすくすが止まらないし。だってカウンタックのくだりとか、クルーザーの遭難とか、もうねぇ……。毎度ながらハリウッドにおける薬理作用の描写力には脱帽。観終えてすぐに「クエイルード」とネット検索したのはいうまでもなし。本物ジョーダン・ベルフォートのホーム・ヴィデオもね。既存の曲づかいもまさしく面目躍如で、マーティン・スコセッシ監督にはこの怒涛の路線を温存してもらいたいよ。




☆第3位
グランド・ブダペスト・ホテル

 微にいり細にいるウェス・アンダースン美学の視覚的悦びに、めまぐるしい活劇要素が増量されて、ただでさえばつぐんにオモシロい。そのうえで、モチーフとなったシュテファン・ツヴァイクおよびその著作の予備知識をふまえると、とても他人ごとじゃなく響いてくる。一見おとぎ話のごとく作りこまれた、スタンダード・サイズの箱庭的舞台。そこで起こる不穏なエピソードが、破廉恥な現政権下で暮らすこの身にこれほどぞくぞく迫るとは……。現実社会の危機感と直結するこの種の感動は、アンダースン監督作では初めてかな。むろん、シネマスコープで描かれる1968年閑散期の寂れたホテルのたたずまいは、いまだ最愛の『ライフ・アクアティック』(2004年)から脈々と流れる不変の持ち味。「あそこに長期滞在したら、どんなふうに過ごそうか……」なんて、うっとり浸っちゃうもんなあ。前作『ムーンライズ・キングダム』( 2013年の第5位)につづき、エンド・クレジットの粋な計らいもうれしいね。




☆第4位
はなしかわって

 梅雨入り直前に引越しをしたことが大きく作用して、59分の中編にもかかわらず上位入り。2年間つづいた横浜郊外暮らしにどうにも馴染めず、再上京を決意した晩冬のタイミングでやけにしっくりきた、新宿ケイズシネマの特集上映 "Hal is Back! Hartley" の1本だ。人助け中年男が大都会を駆けまわる姿が、スカッと胸をすいちゃってさ。バンド演奏シーンを始めすべてが好みってわけじゃないのに、映画ぜんたいから伝わる都会暮らしのわさわさ感と、ハル・ハートリー監督作品特有のすっきり清澄な空気感が妙に心地よくってさ。




☆第5位
フランシス・ハ

 『はなしかわって』と同じく、主な舞台はニューヨーク。主人公フランシスは転居を重ねるし、'Undateable.' って台詞は身につまされるし(笑)……即お気にいりになりそうなものを、最初に観たときはさりげなく目の前を通りすぎちゃったんだよね。でもそのさりげなさゆえに、不思議とくり返し観たくなってさ。年の瀬の3回めで、いきなりトップ10圏外から急上昇(それによりリチャード・リンクレイター監督『6才のボクが、大人になるまで。』が落選)。快活でチャーミングで、フランスかぶれもけっして嫌味にならず、じつによく練りあげられた愛すべきモノクローム作品なんだな。
 こないだアンドレアス・ドラウ来日公演会場のDJで呼んでもらったとき、デイヴィッド・ボウイ 'Modern Love' で始めたのは、あのシーンの余韻でつい……。と同時に、'Modern Love' でサックスを吹いているのが、故フィリップ・シーモア・ホフマンにヘロインを売っていたといわれるロバート・アーロンだったりして、2014年はあの曲に新たな印象が加わったという意味あいもあってさ。




☆第6位
her/世界でひとつの彼女

 まずは、ぜんたい的な色彩やディテイルといった見ためのすばらしさ。初夏に1回めを観た直後、中目黒チリタ店主のふぁっくちゃんに最近のお気にいりを訊かれ、これと『グランド・ブダペスト・ホテル』を挙げたら、「どっちもおしゃれ映画じゃん!」っていわれちゃった(笑)。でも実際のところ、スパイク・ジョーンズとウェス・アンダースンの両監督(奇しくも同い年)は、円熟の境地に差しかかったと思うよ。
 iPhoneを使い始めたのはたしか2009年の梅雨どきで、ほぼ同時にツイッターのアカウントを作ってさ。まあその前に5年ばかりミクシィやマイスペイスもやっていて、SNSへの投稿が日常化していた時期がしばらくあった。当初はサーヴィスを利用したつもりが、しだいに惰性に流されている感覚に囚われ、自分がなにをやっているのかわからなくなったりしてさ(笑)。こないだはフェイスブックもやめたし、ここ2年ほどは意識的に距離をおき、メディアとのつきあいを最適化しているところ。そこにあのテーマだもん。おなじみ粉川哲夫氏のサイト記事には、「先端テクノロジーに乗り切れない者たちの挽歌」とまんま思い当たるフレーズあり。むろん、淡い夜明けの屋上ラスト・シーンの安堵感ったらなかったよ。




☆第7位
インターステラー

 自分の目がすっかりCG映像に慣れっこだと痛感したな。だって、宇宙船模型のあの質感。もうたまんなかった。クリストファー・ノーラン監督のフィルム撮影へのこだわりが吉と出たねえ。話の筋が通らなかったり、おかしなところも多々あれど、未知への道中の光景と興奮で帳消しにできちゃうところは『プロメテウス』(2012年チャート第5位)にちょっと近い。SFじたてのメロドラマを貫く不屈の開拓精神にも、素直にぐっときたよ。




☆第8位
アデル、ブルーは熱い色

 社会階層のちがう若い女性カップルの恋愛の顛末を描き大評判となった、フランス製コミック原作の実写もの。やたらと顔のアップが多いし、息づかいなど音声も生々しく、迫力ある描写に3時間ぐいぐいと惹きつけられたねえ。きくところによると、アブデラティフ・ケシシュ監督は非情なまでに役者を追いこむ演出をするそう。主人公アデルの真に迫った泣きっぷりには、自分の過去の苦いあれこれまでがフラッシュバック。観賞後の疲労度も含め、気軽に触れるとやけどしそうな異色の体感型恋愛映画だった。ちなみに生牡蠣いらずの偏食者としては、ミートソースのスパゲッティならいつだって大歓迎だ。




☆第9位
イコライザー

 2013年第3位の『フライト』につづき、今年もデンゼル主演作が入った。なにより、ちょいホッパー画『ナイトホークス』っぽくもある、寂寞とした深夜ダイナーの孤独感ね。近所にあったら通っちゃうもんなぁ。あの場のムードに気持ちをつかまれたまま、話はぐいぐいエスカレイトして、仏頂面でそこまでやっちゃうかい?!……という、極度の潔癖症と相まったあまりに徹底的な必殺仕事人ぶり。すでに続編の企画ありというのも納得だ。不穏にして痛快無比な、我らが中年ヒーローの誕生だゾ。




☆第10位
ザ・ゲスト

 階下にゲームセンターが入った雑居ビルの劇場。平日水曜の午後4時台上映の回。選んだ映画は、古き佳きジャンル映画の定型にほどよくひねりをきかせた、B級乗りのアクション・スリラー……3つそろった条件反射で、高校生のころ(スプラッター好きだった)の放課後に思わずタイム・スリップしちゃったよ。おまけに劇中音楽は、あきらかに『ドライヴ』(2012年の第3位だ)以降をふまえた80年代リヴァイヴァル仕様で、この曲目。古くはゴス/インダストリアル寄りのニュー・ウェイヴ裏名曲、新しくはコズミック指向のインディ系音源がずらり。音楽担当者は誰かと思えば、ピッツバーグ拠点ゾンビの片われスティーヴ・ムーアだもの。アダム・ウィンガード監督と脚本家サイモン・バレットが組んだ前作『サプライズ』(2013年)での ドワイト・トゥイリー・バンド 'Looking For Magic' に当たる鍵の1曲は、アニーの 'Antonio - Berlin Breakdown Version'。2009年の12インチB面にひっそりと収められた儚く甘ずっぱい隠れ名ヴァージョンが、クライマックスの舞台となる準備中のハロウィン・パーティ会場に鳴り響いちゃう。初冬の夕暮れどき、全身をなんかこう懐かし~ぃ空気に包まれたまま、サンシャイン60通りの雑踏にまぎれたわけさ。帰宅後、すかさずサントラ・アルバム(音盤未発売、残念……)を入手したのはいうまでもない。





 つづいて“旧作再上映/初上映”のトップ5!……と威勢よくいきたいところだが、2014年に観た189本のうち昔の映画はわずか46本。1本単位で絞るのが難しかったので、特集上映を中心とする5選でお茶を濁すとしよう。

☆第1位
イエジー・スコリモフスキ 「亡命」作家43年の軌跡

 映画通諸氏の必須科目にうとい平凡な映画ファンとしては、こういう監督特集がじつにありがたい。連動して参考資料となるムックも刊行とくれば、またまたboidに足を向けて眠れない。製作時期に43年もの幅がある5本いずれも初体験。なかでも、怪しさ極まりない奇譚『シャウト』(1978年)と、出稼ぎ労働者の悲喜劇『ムーンライティング』(1982年)の2本にはやられたね。ロンドン市街でロケをした後者では、たまたま映った背景にオレンジ・ジュースのデビュー・アルバム "You Can't Hide Your Love Forever" の発売告知ポスターが!……見逃さなかったご同輩も多いはず。初期作『出発』(1965年)のオースティンがまっぷたつに割れる名場面も忘れられなくて、まあけっきょくぜんぶよかった。冷戦下のポーランドから亡命をへて帰国という、監督の一連の流れもつかめる貴重な番組だった。




☆第2位
Hal is Back! Hartley

 EBTGの 'The Only Living Boy In New York' と 'Walking Wounded' のヴィデオも撮っているし、自分と無関係ではないと知りながら、「ニューヨークの気どったインディ作家でしょ」なんて敬遠していたもんなあ……。4本すべてがオモシロかった。空間の切りとりかたがなんとも快く、初めてなのになんだか懐かしかったよ。ちなみに、2011年3月11日の地震のときは新宿ケイズシネマにいたから、ここの客席に座るといつもちょっとだけ緊張するんだな。




☆第3位
ジャック・タチ映画祭

 やはり規格外の粋人にして奇人だと思う。とにかく芸が細かいんだ。おそろしいほどギャグのタイミングを外さない。『プレイタイム』(1967年)の徹底ぶりなんて、そりゃあ大借金を抱えちゃうでしょうともよ。逆に好き勝手まではいかなかったらしい『トラフィック』(1971年)の、張り詰めていない感じがまたいいんだ。でもでもやっぱり、『ぼくの伯父さんの休暇』(1953年)だね。あのテーマ曲の調べには、いつ聴いてもたまらない気持ちになる。チラシ裏の番組表を見まちがえ、『乱暴者』(1934年)と『パラード』(1974年)2本だてをダブって観たのはおっちょこちょい。1回めにちょっと居眠りしたから、結果オーライだけどさ。愛娘ソフィが撮った短編『家族の味見』(1976年)なんていうひろいものまである13本。強力な特集だ。




☆第4位
五社英雄映画祭

 これもムックと連動しての監督特集上映。ごぞんじ春日太一氏(真夏のラジオ出演最高だった)の労作『五社英雄 極彩色のエンターテイナー』をきっかけに、これまた長年のあいだ「なんだかくどそう……」と勝手に苦手と決めこんでいた五社作品を、ちょっとかじってみたわけさ。まずは、池袋新文芸坐のロビーに飾られた友近からの花(笑)。10日間で全20本のうち、わずか3日ぶんの6本しか観なかったけれど、かつての先入観はいっきにプラスへと転化。初日の仲代達矢氏、翌週の岩下志麻氏のトークショウ観覧記念もあり第4位だ。岩下さんもメナードの怖いひととか思っていたけど、2013年に勝新映画『迷走地図』(1983年)を観て以来、なんか好きなのだ。




☆第5位
シナのルーレット(1976年)

 その内容もさることながら、これを観た8月某日は朝までモアでしこたま飲んだから、夕刻に猛烈な眠気および全身の不快感と闘いながらのシュールな観賞が忘れがたい……。所有するライナー・ヴェルナー・ファスビンダー箱は第3集どまりだし、第5集に入っているこの名作はぜひスクリーンで拝みたくてさ。なんたって変な汗をかきながら大音量で浴びる挿入歌、クラフトヴェルクの 'Radioactivity' でしょ(笑)。次の機会にはちゃんとしよう。