2013年12月6日金曜日

アンビエントな通路

 昔なじみの街を歩いていると、ひんぱんに脳内でストリート・ヴューがオンになる。たとえば渋谷駅前のスクランブル交差点。じっさいは眼前にツタヤやスターバックスの入るキューフロントビルがそそり立っているとしても、信号待ちのあいだ頭のなかに投影されるのは、J・ブラックフットの1983年アルバム"City Slicker"のジャケットに似たかつての光景だ。



 西武百貨店A館B館のあいだから、井の頭通りの東急ハンズあたりにさしかかると、左前方の2階窓には黄色に赤文字の"TOWER RECORDS"のロゴが視界に入る。そのビル、ヴィレッジ80のたもとにはカルト映画や音楽ものにつよいヴィデオ屋がちょこんと建っている。我が知覚の曲直はともかく、たしかに見えてしまうのだ。まるでグーグルのストリート・ヴューで長らく更新されていない地域に、とっくにたたまれたはずの店が映しだされるように。 

 先日、映画までの時間をつぶそうと池袋駅周辺をぶらついた。80年代末から90年代半ばまで近場の西早稲田に住んでいたので、いまだに足が地理を覚えている。西武線の南口改札にほど近い西武百貨店本館の地下1階から、書店リブロのある別館に向かう連絡通路。その手前にきたとたん、脳内ストリート・ヴュー機能が作動した。ほんの短い通行時間にほっと息をつけるような、淡い間接照明の快い空間演出がなされている……はずなのに、記憶にエラーが生じてタイムスリップ体験がかなわない。そこに聴こえるはずの音がどうにも想いだせないのだ。たしか清流のせせらぎのような、小鳥のさえずりのような、いかにも90年代初頭らしいアンビエントな立体音響効果がしかけられていたのだが……。むなしくもそこはただ通りすぎるための無粋な廊下。記憶がよみがえらないかぎり、もうあの通路にはいけないのだろう。

  ところが今朝、YouTubeで1991年当時のアンビエント通路を捉えた動画を発見。往路(3:00〜3:02)のみならず復路(3:49〜3:53)も収録されている。移動時間がスキップする編集がなされ、聴こえるのはほんの断片。とはいえ、脳細胞にかろうじて効果音サンプルが追補された。つぎの池袋訪問でどうなるか試してみよう。

 1991 Tokyo Shopping Etc 東京買い物など (910819)

  この動画をアップしたライル・ヒロシ・サクソン氏のチャンネルは、他にも90年代初期東京の記録が充実で釘づけだ。