2013年12月28日土曜日

BABY RECORDS' 2013 FAVES TOP 30 - Part 2

 2013年お気にいり盤トップ30の後編、パート2だよ。
 パート1はこちら→ BABY RECORDS' 2013 FAVES TOP 30 - Part 1


 RONALD ISLEY / This Song Is For You (CD) 

 お務めを終えてとうとう完全ソロ名義になった前作"Mr. I"(2010年)がすっきりもの足りなかったアイズリーの御大。今回はしなやかさと粘りが戻ってひと安心。デビューから数えて59年でこの現役感。♪ラララララ~ララ~に、♪ウェルウェルウェル……もはや新しさは求めえないとわかっていても、聴き惚れトロけずにはいられぬ名人芸なのだ。1998年の来日公演で観たっきりだから、願わくばもういちど生の歌声を体験したい……。
 


 THE JUAN MACLEAN / Feel Like Movin' (12 inch)

 ただでさえ低空飛行の精神状態で、ダンスフロアで長時間踊る習慣もすっかり遠のいちゃった現在、高揚感をあおるタイプのハウス皿への反応もずいぶん鈍くなった。そこにどういうわけかぴったりきたのが 'Happy House'(2008年)でおなじみザ・フアン・マクリーンの新曲。べつだん変わった趣向もなく、むしろ平凡ですらあるDFA製ハウス・ミュージックが、「しょうがない、出かけるか」とか「ご飯つくるのめんどくさいなあ」なんて場面で、気分の高度をすこし上昇させるのに役だった。元々ナンシー・ワンの歌声は好みだし、ビカビカしすぎないシンセ音などのぜんたい的バランスがほどよくて、自室において機能性を発揮した12インチ。スプリット盤の裏面、シット・ロボットのカップリング曲はいちど聴いたきりだ。
 


 JESSY LANZA / Pull My Hair Back (LP) 

毎晩お風呂に入る前に、照明を落とした部屋でひとしきりストレッチ体操をする長年の日課がありまして、BGMにはだいたいLP1枚ぶんがちょうどよい長さ。そこで重宝したのがハイパーダブ発のカナダ人女性シンガー初アルバム。ジェシー・ウェア "Devotion"(2012年)の2匹めのどぜう感がなきにしもあらずだが、あちらが白っぽいジャケならこちらは黒っぽく、ぐっと輝度が低く翳りを帯びた音の艶。年間チャート前編で挙げたダイアナ "Perpetual Surrender" と同じく、ここ数年で定着した音楽スタイルをふまえ、MOR的な着地点を見いだしたレコードといえそう。来年にリリースされたならちょっと鮮度落ちぎみに思えたかもしれない。そういう意味でも2013年っぽい。
 


 JAMIE LIDELL / Jamie Lidell (2LP)

  ジムのアルバムにはずれなし。デビュー盤 "Muddlin Gear"(2000年)ラストのドゥ・ワップ曲 'Daddy No Lie' の歌声に驚いたのもいまは昔。ざらついた70年代ソウル・マナーの前作 "Compass"(2010年)から一転、プリンスやキャメオばりにくっきりクリアな80年代式エレクトリック・ファンクで、自慢の喉パンチを炸裂させる第5作なのだ。4曲入り12インチ "Big Love Remixes" 収録のブギーな 'Big Love (LORENTZ RHODE Remix)' がまたごきげん。はてさて、つぎはどう攻めてくるのかな。
 


 STEPHAN MATHIEU/DAVID SYLVIAN / Wandermüde (CD) 

ダウンロード版先行なれどCD版は年を越してから出たので、お皿派としては2013年盤。毎度聴かずにはいられないデイヴィッドの新作、またしても旧作を素材としたヴァリエイションで、今回は(またしても寡聞につき)名前じたい初耳のドイツ人音響作家が名盤 "Blemish"(2003年)全編をリミックス加工している。横たわって目を閉じれば、体ごと別天地にもっていかれる表情豊かなアンビエント作品。長年のファンとしてひいきめなのはたしかだけれど、どんなに実験的な試みを行なおうとも浸透してくるのは、必ずどこかポップな温もりがデイヴィッドの音楽に寄り添っているからだろう。矢野顕子 'David'(1986年)に歌われた人柄かな。
 


 JANELLE MONÁE / The Electric Lady (2LP) 

ソウル心やファンク心を揺さぶってくれる合衆国メインストリームのヒット作になかなかお目にかかれぬこのご時世。それでもハリウッド大作同様、ぐっとくる作品がたまーに出てくるから知らんぷりは禁物さ。「プリンスが参加しているからちょっと試聴しようかな」なんて気軽に触れたら、なんだこの充実度! たしかにオールディーズの記号的要素がふんだんにちりばめられ、ラジオDJ登場のスキットもなじみの手法とはいえ、LP2枚ぶんの68分間をだれずにいっき聴きさせるエンターテインメントの底力にまいった。ヴァイナル盤面の白黒ツートーン仕様もイカすね。
 


 ED MOTTA / AOR (CD) 

 AOR=アダルト・オリエンテッド・ロックという分類は海外じゃ通じないよと注釈がついたのもひと昔前。和物まで守備範囲のレコード・コレクターでもあるカリオカ太っちょソウルマンが、ど真んなかすぎるほど直球狙いの "AOR" ときたもんだ。まあなんちゅーかスティーリー・ダンなわけだけれど、風光明媚なコパカバーナの潮風もたっぷり含ませてあるのがすこぶる快適。名人デイヴィッド・T・ウォーカーまでお招きし、巨体を揺さぶりつつ気分はもうボズ・スキャッグスなエヂ・モッタだ。ところで第4曲 'Ondas Sonoras' の後半ブリッヂ部のメロディ、ザ・スタイル・カウンシル 'Homebreakers' のブリッヂにそっくりじゃないかい。愛聴中のポルトガル語版CDの他に英語版もあり。
 


 MY BLOODY VALENTINE / m b v (LP/CD/WAV) 

 正直いってさほど期待していなかった。いい加減待ちくたびれたし、いつの間にやら過剰に崇められるのを見てしらけぎみでもあったし。それでもいきなりのリリース告知に即ウェブサイトで注文したら、よかったんだなこれが(笑)。飾らず素朴なようでいて、手が凝んで凄い。時流どこ吹く風なミックスの感じも渋い。'Only Tomorrow' とか 'New You' とかメロディもすばらしい。いくらフォロワーが後を絶たなくても、こんな音楽他にないでしょ。
 


 PRINCE / The Breakfast Experience (AAC)

  最近のプリンスのもみあげなし小盛りアフロ・ヘアはなんか可愛い。3人娘サードアイガールを従えてちょっぴり若がえった気もする。ダウンロード版のみは歯がゆいが、ひさびさに満ち足りた気持ちにさせてくれるシングル曲。5つのヴァージョンどれもがクールで、朝食にちなんだ各ミックス名もよし。ヴィデオのエロっぽいファンタジーも好み。そろそろアルバムと来日公演をお願いしたいなあ。ちなみにジャケで『パープル・レイン』期の扮装をしているのは、コメディ専門局コメディ・セントラルの番組 "Chapelle's Show" で物まねネタ 'True Hollywood Stories: Prince' がうけた人気コメディアン、デイヴ・シャペールだよ。
 


 QUADRON / Avalanche (LP)

  ジャケを見た瞬間、ヴィクター・ラズロリンダ・ディ・フランコを連想したのは内緒だぜ(笑)。たしかにぽんこつの脳みそだが、当たらずといえど遠からずじゃないかな。片われロビン・ブラウンの別プロジェクト、ライのヒット作 "Woman" は上品すぎてどうもひっかかりが弱くてさ。いちいち古いたとえで申し訳ないが、バーシアな清涼感、爽快感のあるクアドロンのほうを断然気にいったってわけさ。この際、ロビンにはもっと六本木ウェイヴ in 80's的プロダクションのヴァリエイションを聴かせていただきたい!
 


 SILKIE / The Lost Tapes Vol.1 (2×12 inch) 

 あいも変わらずソウル心にファンク心、ブラコン心にAOR心をダブステップにも求めているが、昨年チャートにおけるスウィンドル 'If I Was Super Hero'ジミー・エドガー 'Switch Switch' に匹敵するお皿にはとうとうめぐり会えなかった……。でもでもその代わりジャズる心を満たしてくれたのが、シルキーの2枚組12インチB面収録のずばり 'Jazz Dub'。じつは2008年にインターネット配信のみで 'Jazz Dubstep' なる曲を出していることも判明し、その名どおりシルクの似合う夜ジャズ男として、すっかり見直しちゃったのだ。
 


 STRAY / When It Rains (12 inch) 

 かつてはグッド・ルッキングからジャジーでアートコアなドラム&ベースを出していたブルー・マー・テン主宰のレーベル発。今年はエクジット・レコーズからも1枚発表したロンドン青年ストレイくんが、曲名の示すとおり雨降りどきムードがたまらない名演をふわりと届けてくれた。これまた日課のストレッチ体操時にかけてみたら、い~いぐあいに深い呼吸ができ、筋肉にたまった疲労物質がさらさらさら~っと流れていく感じがしたんだな。同じレーベルからのデルパー&イレイザー 'Imagine' のひじょーに風雅なイメージにも心洗われたねえ。
 


 武末亮 / Six-O-Seven-Blues (3 × 7 inch) 

 ノアルイズ・マーロン・タイツのギター弾き、武ちゃんが、90年代から虜になってしこしこ練習&宅録にはげんでいた戦前カントリー・ブルーズ・スタイル。ついに初ソロ・アルバムとなり、エム・レコードから世に問われたぞ。ゆる~りと空気を震わせるアンビエンスで、煩雑な日常から和みの境地へと瞬間移動。ここら辺の古い音源になじみがないからなおのこと、懐古趣味には終わらない不可思議な響きについつい聴きいっちゃってさ。いまだって、キーをタイプする手がしばらく止まっていたもんな。CDも出ているけれど、3枚の7インチ裏表をとっかえひっかえしての体験をおすすめ。1曲1曲の伝わりかたがまるで違うのだ。
 


TOUCH SENSITIVE / Show Me (12 inch)

  元気なレーベルだけあり、豪州発フューチャー・クラシックのレコードは今年3枚ほど入手。なかでもとりわけ気にいったのが、ヴァン・シーの一員マイケルのソロ・プロジェクト、タッチ・センシティヴの、泣き入りメロウ・ミディアムな12インチB面曲 'Show Me'。マイケルはさらにレーベル仲間ヘイデン・ジェイムズの12インチにも爽快甘口ディスコの 'Permission To Love (TOUCH SENSITIVE Remix)' を提供。すっかり気になるプロデューサーの仲間いりだ。他にこのレーベルでは、チャールズ・マードックの4曲入り10インチ "Weathered Straight" には収録されなかった、Soundcloudの無料ダウンロード曲 'Dekire feat. OSKER KEY SUNG (BODHI Remix)' の、ちょいAOR感漂う耳心地にもハメられたぞ。
 


 山下洋 / Somewhere Man (CD) 

 惣一朗さん、堀江くん、中原くん、生花、武ちゃん、そして山下くん。今年は友人知人がごきげんなアルバムをいっぱい出してくれた。初のソロ・アルバムは、まさに山下洋クラシックスなソウルフル洋楽カヴァー集。くわしくは、4月26日のブログ記事をご参照ください。





☆しかしこうして並べてみると、いつになくベテラン組が多いなあ。よく聴いた キング・クルール "6 Feet Beneath The Moon" や ジュリア・ホルター "Loud City Song" すらあえなく選外。オメガ・スープリーム製のブギー・ファンクなど、ここ5年ほどの流行スタイルも食傷ぎみで、よほどの傑作じゃなければ選ぶ気になれず。なにかがひと区切りつきつつあるのを実感するし、新しい芽ばえも感じるけれど、本気でぐっとくるまでには至らなかった。そんなタイミングで素直に愛聴できたのが、実績のある古株の音盤だったということなのかな。「単においちゃんだからでしょ」という声もありますが……と、まあ2013年はこんな感じだったよ。

  すでに順位は決めてある再発盤/発掘音源盤のトップ10と、新作映画のトップ10および旧作映画再上映/初上映のトップ5は、年明けに発表するつもり。では、よいお年を!