2013年12月28日土曜日

BABY RECORDS' 2013 FAVES TOP 30 - Part 2

 2013年お気にいり盤トップ30の後編、パート2だよ。
 パート1はこちら→ BABY RECORDS' 2013 FAVES TOP 30 - Part 1


 RONALD ISLEY / This Song Is For You (CD) 

 お務めを終えてとうとう完全ソロ名義になった前作"Mr. I"(2010年)がすっきりもの足りなかったアイズリーの御大。今回はしなやかさと粘りが戻ってひと安心。デビューから数えて59年でこの現役感。♪ラララララ~ララ~に、♪ウェルウェルウェル……もはや新しさは求めえないとわかっていても、聴き惚れトロけずにはいられぬ名人芸なのだ。1998年の来日公演で観たっきりだから、願わくばもういちど生の歌声を体験したい……。
 


 THE JUAN MACLEAN / Feel Like Movin' (12 inch)

 ただでさえ低空飛行の精神状態で、ダンスフロアで長時間踊る習慣もすっかり遠のいちゃった現在、高揚感をあおるタイプのハウス皿への反応もずいぶん鈍くなった。そこにどういうわけかぴったりきたのが 'Happy House'(2008年)でおなじみザ・フアン・マクリーンの新曲。べつだん変わった趣向もなく、むしろ平凡ですらあるDFA製ハウス・ミュージックが、「しょうがない、出かけるか」とか「ご飯つくるのめんどくさいなあ」なんて場面で、気分の高度をすこし上昇させるのに役だった。元々ナンシー・ワンの歌声は好みだし、ビカビカしすぎないシンセ音などのぜんたい的バランスがほどよくて、自室において機能性を発揮した12インチ。スプリット盤の裏面、シット・ロボットのカップリング曲はいちど聴いたきりだ。
 


 JESSY LANZA / Pull My Hair Back (LP) 

毎晩お風呂に入る前に、照明を落とした部屋でひとしきりストレッチ体操をする長年の日課がありまして、BGMにはだいたいLP1枚ぶんがちょうどよい長さ。そこで重宝したのがハイパーダブ発のカナダ人女性シンガー初アルバム。ジェシー・ウェア "Devotion"(2012年)の2匹めのどぜう感がなきにしもあらずだが、あちらが白っぽいジャケならこちらは黒っぽく、ぐっと輝度が低く翳りを帯びた音の艶。年間チャート前編で挙げたダイアナ "Perpetual Surrender" と同じく、ここ数年で定着した音楽スタイルをふまえ、MOR的な着地点を見いだしたレコードといえそう。来年にリリースされたならちょっと鮮度落ちぎみに思えたかもしれない。そういう意味でも2013年っぽい。
 


 JAMIE LIDELL / Jamie Lidell (2LP)

  ジムのアルバムにはずれなし。デビュー盤 "Muddlin Gear"(2000年)ラストのドゥ・ワップ曲 'Daddy No Lie' の歌声に驚いたのもいまは昔。ざらついた70年代ソウル・マナーの前作 "Compass"(2010年)から一転、プリンスやキャメオばりにくっきりクリアな80年代式エレクトリック・ファンクで、自慢の喉パンチを炸裂させる第5作なのだ。4曲入り12インチ "Big Love Remixes" 収録のブギーな 'Big Love (LORENTZ RHODE Remix)' がまたごきげん。はてさて、つぎはどう攻めてくるのかな。
 


 STEPHAN MATHIEU/DAVID SYLVIAN / Wandermüde (CD) 

ダウンロード版先行なれどCD版は年を越してから出たので、お皿派としては2013年盤。毎度聴かずにはいられないデイヴィッドの新作、またしても旧作を素材としたヴァリエイションで、今回は(またしても寡聞につき)名前じたい初耳のドイツ人音響作家が名盤 "Blemish"(2003年)全編をリミックス加工している。横たわって目を閉じれば、体ごと別天地にもっていかれる表情豊かなアンビエント作品。長年のファンとしてひいきめなのはたしかだけれど、どんなに実験的な試みを行なおうとも浸透してくるのは、必ずどこかポップな温もりがデイヴィッドの音楽に寄り添っているからだろう。矢野顕子 'David'(1986年)に歌われた人柄かな。
 


 JANELLE MONÁE / The Electric Lady (2LP) 

ソウル心やファンク心を揺さぶってくれる合衆国メインストリームのヒット作になかなかお目にかかれぬこのご時世。それでもハリウッド大作同様、ぐっとくる作品がたまーに出てくるから知らんぷりは禁物さ。「プリンスが参加しているからちょっと試聴しようかな」なんて気軽に触れたら、なんだこの充実度! たしかにオールディーズの記号的要素がふんだんにちりばめられ、ラジオDJ登場のスキットもなじみの手法とはいえ、LP2枚ぶんの68分間をだれずにいっき聴きさせるエンターテインメントの底力にまいった。ヴァイナル盤面の白黒ツートーン仕様もイカすね。
 


 ED MOTTA / AOR (CD) 

 AOR=アダルト・オリエンテッド・ロックという分類は海外じゃ通じないよと注釈がついたのもひと昔前。和物まで守備範囲のレコード・コレクターでもあるカリオカ太っちょソウルマンが、ど真んなかすぎるほど直球狙いの "AOR" ときたもんだ。まあなんちゅーかスティーリー・ダンなわけだけれど、風光明媚なコパカバーナの潮風もたっぷり含ませてあるのがすこぶる快適。名人デイヴィッド・T・ウォーカーまでお招きし、巨体を揺さぶりつつ気分はもうボズ・スキャッグスなエヂ・モッタだ。ところで第4曲 'Ondas Sonoras' の後半ブリッヂ部のメロディ、ザ・スタイル・カウンシル 'Homebreakers' のブリッヂにそっくりじゃないかい。愛聴中のポルトガル語版CDの他に英語版もあり。
 


 MY BLOODY VALENTINE / m b v (LP/CD/WAV) 

 正直いってさほど期待していなかった。いい加減待ちくたびれたし、いつの間にやら過剰に崇められるのを見てしらけぎみでもあったし。それでもいきなりのリリース告知に即ウェブサイトで注文したら、よかったんだなこれが(笑)。飾らず素朴なようでいて、手が凝んで凄い。時流どこ吹く風なミックスの感じも渋い。'Only Tomorrow' とか 'New You' とかメロディもすばらしい。いくらフォロワーが後を絶たなくても、こんな音楽他にないでしょ。
 


 PRINCE / The Breakfast Experience (AAC)

  最近のプリンスのもみあげなし小盛りアフロ・ヘアはなんか可愛い。3人娘サードアイガールを従えてちょっぴり若がえった気もする。ダウンロード版のみは歯がゆいが、ひさびさに満ち足りた気持ちにさせてくれるシングル曲。5つのヴァージョンどれもがクールで、朝食にちなんだ各ミックス名もよし。ヴィデオのエロっぽいファンタジーも好み。そろそろアルバムと来日公演をお願いしたいなあ。ちなみにジャケで『パープル・レイン』期の扮装をしているのは、コメディ専門局コメディ・セントラルの番組 "Chapelle's Show" で物まねネタ 'True Hollywood Stories: Prince' がうけた人気コメディアン、デイヴ・シャペールだよ。
 


 QUADRON / Avalanche (LP)

  ジャケを見た瞬間、ヴィクター・ラズロリンダ・ディ・フランコを連想したのは内緒だぜ(笑)。たしかにぽんこつの脳みそだが、当たらずといえど遠からずじゃないかな。片われロビン・ブラウンの別プロジェクト、ライのヒット作 "Woman" は上品すぎてどうもひっかかりが弱くてさ。いちいち古いたとえで申し訳ないが、バーシアな清涼感、爽快感のあるクアドロンのほうを断然気にいったってわけさ。この際、ロビンにはもっと六本木ウェイヴ in 80's的プロダクションのヴァリエイションを聴かせていただきたい!
 


 SILKIE / The Lost Tapes Vol.1 (2×12 inch) 

 あいも変わらずソウル心にファンク心、ブラコン心にAOR心をダブステップにも求めているが、昨年チャートにおけるスウィンドル 'If I Was Super Hero'ジミー・エドガー 'Switch Switch' に匹敵するお皿にはとうとうめぐり会えなかった……。でもでもその代わりジャズる心を満たしてくれたのが、シルキーの2枚組12インチB面収録のずばり 'Jazz Dub'。じつは2008年にインターネット配信のみで 'Jazz Dubstep' なる曲を出していることも判明し、その名どおりシルクの似合う夜ジャズ男として、すっかり見直しちゃったのだ。
 


 STRAY / When It Rains (12 inch) 

 かつてはグッド・ルッキングからジャジーでアートコアなドラム&ベースを出していたブルー・マー・テン主宰のレーベル発。今年はエクジット・レコーズからも1枚発表したロンドン青年ストレイくんが、曲名の示すとおり雨降りどきムードがたまらない名演をふわりと届けてくれた。これまた日課のストレッチ体操時にかけてみたら、い~いぐあいに深い呼吸ができ、筋肉にたまった疲労物質がさらさらさら~っと流れていく感じがしたんだな。同じレーベルからのデルパー&イレイザー 'Imagine' のひじょーに風雅なイメージにも心洗われたねえ。
 


 武末亮 / Six-O-Seven-Blues (3 × 7 inch) 

 ノアルイズ・マーロン・タイツのギター弾き、武ちゃんが、90年代から虜になってしこしこ練習&宅録にはげんでいた戦前カントリー・ブルーズ・スタイル。ついに初ソロ・アルバムとなり、エム・レコードから世に問われたぞ。ゆる~りと空気を震わせるアンビエンスで、煩雑な日常から和みの境地へと瞬間移動。ここら辺の古い音源になじみがないからなおのこと、懐古趣味には終わらない不可思議な響きについつい聴きいっちゃってさ。いまだって、キーをタイプする手がしばらく止まっていたもんな。CDも出ているけれど、3枚の7インチ裏表をとっかえひっかえしての体験をおすすめ。1曲1曲の伝わりかたがまるで違うのだ。
 


TOUCH SENSITIVE / Show Me (12 inch)

  元気なレーベルだけあり、豪州発フューチャー・クラシックのレコードは今年3枚ほど入手。なかでもとりわけ気にいったのが、ヴァン・シーの一員マイケルのソロ・プロジェクト、タッチ・センシティヴの、泣き入りメロウ・ミディアムな12インチB面曲 'Show Me'。マイケルはさらにレーベル仲間ヘイデン・ジェイムズの12インチにも爽快甘口ディスコの 'Permission To Love (TOUCH SENSITIVE Remix)' を提供。すっかり気になるプロデューサーの仲間いりだ。他にこのレーベルでは、チャールズ・マードックの4曲入り10インチ "Weathered Straight" には収録されなかった、Soundcloudの無料ダウンロード曲 'Dekire feat. OSKER KEY SUNG (BODHI Remix)' の、ちょいAOR感漂う耳心地にもハメられたぞ。
 


 山下洋 / Somewhere Man (CD) 

 惣一朗さん、堀江くん、中原くん、生花、武ちゃん、そして山下くん。今年は友人知人がごきげんなアルバムをいっぱい出してくれた。初のソロ・アルバムは、まさに山下洋クラシックスなソウルフル洋楽カヴァー集。くわしくは、4月26日のブログ記事をご参照ください。





☆しかしこうして並べてみると、いつになくベテラン組が多いなあ。よく聴いた キング・クルール "6 Feet Beneath The Moon" や ジュリア・ホルター "Loud City Song" すらあえなく選外。オメガ・スープリーム製のブギー・ファンクなど、ここ5年ほどの流行スタイルも食傷ぎみで、よほどの傑作じゃなければ選ぶ気になれず。なにかがひと区切りつきつつあるのを実感するし、新しい芽ばえも感じるけれど、本気でぐっとくるまでには至らなかった。そんなタイミングで素直に愛聴できたのが、実績のある古株の音盤だったということなのかな。「単においちゃんだからでしょ」という声もありますが……と、まあ2013年はこんな感じだったよ。

  すでに順位は決めてある再発盤/発掘音源盤のトップ10と、新作映画のトップ10および旧作映画再上映/初上映のトップ5は、年明けに発表するつもり。では、よいお年を!

BABY RECORDS' 2013 FAVES TOP 30 - Part 1

 さて年の瀬恒例、お気にいり盤の年間トップ30(2013年版)を発表するよ。
  いつもどおりトップ3だけを決めて、あとはアルファベット順。タイトルうしろのカッコ内は所有しているフォーマット。それぞれに感想コメント、ジャケット(もしくはレーベル部分)写真をつけ、YouTubeやSoundCloudで聴けるものは貼っといたぞ。
  ページが重くなるので記事をふたつに分けた前編、パート1からいってみよう。おひまなときにでもひやかして頂戴。


 ☆第1位
PREFAB SPROUT / Crimson/Red (LP+CD) 

 やはり凄い。古いデモ音源を解凍蘇生した前作"Let's Change The World With Music"(2009年)の音のちゃちさに猛烈なもどかしさを覚えた大ファンとしては、題名の色彩そのままの健やかな血色よさに胸をなでおろした。実感するのは、くり返すほどに頭に残り口ずさめちゃうメロディの強度。その思いをさらに強めたのは、合衆国のスプラウトマニアがパディ・マクアルーン様式を踏襲するトリビュート・バンド、スプラウトレスのアルバム"Insights From Retrospect"と"Moveable Feast"(ファンサイトのザ・プリファブ・スプラウト・プロジェクトで購入可)。むろん同好の士としての共感はあれど、器用に真似るほどに本家本元の凄さこそが鬼気迫っちゃうのだから残酷だ。そういえばこないだいったカラオケ屋に'Cruel'があったっけ。ひとりでこっそり歌いにいこうかな。
 


 ☆第2位
SOGGY CHEERIOS / 1959 (CD)

  我ながら意外な第2位は、鈴木惣一朗&直枝政広の1959年生まれデュオ初アルバム。惣一朗さんは本人のことも知っているけど、直枝氏の音楽とは縁がなくて、カーネーションもデビュー・シングル「夜の煙突」(1984年)とデビュー・アルバム"Young Wise Men"(1988年)しかリアルタイムで聴いてこなかった。ところがこの夏、YouTubeのリリース予告編映像がやけに心にひっかかり、秋が深まるころに再度観たらやたらぐっときて、すぐさま渋谷のタワーレコードへ。同級生の放課後活動っぽい曇天夕闇感がたまらなく胸を打つ、日本語ロックの新しい古典にして定番でしょ。ネット通販で手に入れたライヴ盤 "2013.9.29 Osaka" のでこぼこコンビぶりも愉し。あきらかに化学反応起きているね。
 


 ☆第3位
THE STEPKIDS / The Lottery (12 inch) 

 今年のベスト・シングル。YouTubeのコメント欄にある"Steely Dan's Step kids..."ってのはいい得て妙。ふいに頭のなかでイントロが流れだして、むしょうに聴きたくなるんだな。で、じっさい耳にすると、ほんのちょっとアレンジが野暮ったく思えたりもして。でもそのハズしぐあいこそがザ・ステップキッズのマニアックな個性でさ。アルバム単位でまとめて聴くと、ナードっぽさばかりが気になっちゃうから、自分にとってはあくまでシングル向きのバンドかな。2011年の12インチB面曲'La La'以来の愛聴曲。ダウンロード発売のみだけど、ダフト・パンクとティンバーレイクの2曲をジャズった企画もの"Live Covers"もふるっていた。
   


ここからはアルファベット順だよ。

 CLUEKID / Dolphine (12 inch) 

 瑞々しきアンビエントじたてがたまらない海洋ダブステップの裏名曲。じつをいえば 'Sueño Latino' とか 'Pacific State' とか想い出しちゃってさ。この手のイルカ(not フォーク歌手)な感じは、いつまでたっても大好物なんだな。
 


 CROW44 / Crow 44 (LP) 

 ザ・ステップキッズも第3位に選び、あいかわらずヒット率高いストーンズ・スロウ・レコーズ。なかでもジェイムズ・パンツが発見したという、デズモンド・ピアスなる英国宅録人のちょいゴスな夢サイケデリアにはハッとさせられた。安堵感と昂揚感がいり交じってずーんと胸に響く第1曲 'Love You To Death' イントロの説得力で、いっきにひきこまれちゃうもんなあ。ところがウェブ検索では「60年代にキャリアを開始」だとか「ネットコンピューティングの学位を持つ大学院生」だとか、ピアス氏の実体がどうにも見えてこない。「じつはパンツ本人じゃないのー?」なんて疑っちゃったりもしてさ。アルバム25枚ぶんの音源から選曲したというのに、わずか8曲入りなのも不自然だし。ともあれ内容は最高。
 


 DAFT PUNK / Random Access Memories (2LP)

  最初にYouTubeで 'Get Lucky' を聴いて、「へえ、ファレルと組んだんだ」程度の関心度しかなかった大ヒット・アルバム。ところがところが、6月下旬のある晩に近所のホームセンターの前を通りかかったときの話。茶髪のヤンキー娘が自転車のタイヤに空気を入れているバックで 、店頭のしょぼいスピーカーから 'Get Lucky' が低く流れていて、その光景になぜか「わかった!」と思っちゃったわけなのさ。ちょうど空気もゆるんで、薄手のパーカーに風が心地よい宵の口だった。ジョルジオ御大の敬愛ぶりも含め、ほどよくメロウでなんとなくELOなすばらしきディスコ・レコードです。
 


 DARKSIDE / Psychic (CD)

  鬼才とうたわれる片われニコラス・ジャーの音源はとくに追っていなかったが、ギター弾きのデイヴ・ハリントンと組んだとたんにぐっときた。8月末にYouTubeで知った先行公開曲 'Golden Arrow' の変態音沼の深みとバレアリックな抜けの危うくも絶妙なバランス感覚にやられて、すぐに2011年のデビュー・10インチも入手してさ。バンド名の印象にひっぱられつつ、フロイド『狂気』が頭をよぎるコンセプト盤的な構成にどっぷり。月の裏で鈍く妖しく発光する、幻惑のフル・アルバム。
 


 DIANA / Perpetual Surrender (LP) 

 ナイト・ジュエルが標榜するAOR&Bのカナダ版って感じの、いかにも時流に乗ったレコード。もはやけっして新しいスタイルじゃないからこそのMORな中庸ぐあいが、かえって快くヘヴィ・ローテイション。たとえば、流行にあわせて音をころころ変えるヒット職人が、ちょうどうまいところを突いちゃった名盤。じっさいのダイアナの活動姿勢はともあれ、ああいうライト・プレイス・ライト・タイムな感触の2013年代表だね。タイトル曲にサックス・ソロが入る感じがまたいいんだ。むろんiPhoneのプレイヤーにも常備。いつもの止まり木、中目黒のチリタ帰りの電車内、ぼんやり酔った頭で目を閉じて、いくたび聴くでもなく聴き流したことか。
 


 DJ EARL / Blue Summer EP (12 inch) 

 はっきりいって、おいちゃんの年齢になるとジューク/フットワークのスピードに心臓がついていけません! それでも40歳を越えるトラックスマン作品のソウル心に反応したり、横浜発ペイズリー・パークス作 'So High' のサザンな情感に惹かれたりと、微妙に気にしてもいるどっちつかずのお年ごろ。そんなひき裂かれぎみのハートのひび割れを、ふいに通りぬけた一陣のBREEZE……。タイトルとジャケにつられて手にとった夏向きライト級の4曲入り12インチが、今年もかろうじてシカゴのゲットーに心をつなぎとめてくれたとさ。


 EXPRESS RISING / Express Rising (LP) 

 再発盤/発掘音源盤の年間チャート上位に必ずひとつは送り込む名門ヌメロ・グループがわざわざ流通する自主制作の新譜なのだから、当然気になりYouTubeで聴いてみりゃ、なんとゆったりとした心地よさ。シカゴ在住レコード・コレクター/プロデューサー、ダンテ・カルファーニャによるソロ・プロジェクトのアルバム第2作なのさ。よりヒップ・ホップ寄りだった2003年の前作が高く評価されたらしいけど、寡聞にして知らなかった……。どこか人間味のにじむアブストラクト感がじつにしっくりくる、安息のインストゥルメンタル・レコードだ。ターンテーブル・ラブのブログ内インタヴューのお気にいりLP5枚には、ネッド・ドヒニーの "Prone"(1978年)やウィーの "You Can Fly On My Aeroplane"(1977年)も選盤。なんかお友達になれそうだ。
 


 灰野敬二 (EXPERIMENTAL MIXTURE) / In The World (3CD) 

 これまた我ながら意外。なんたって4月のブログ記事の浅川マキ同様、アングラかつモノクロームすぎるイメージから敬遠しがちだった大ベテラン。その距離がいっきに縮まった気がする、“DJ”灰野敬二の新境地なのだ。CDJ4台とリズムマシン2台をあやつり、古今東西種々雑多な音楽を「実験的混合」。3枚組の各盤に "In Your Ears"、"In Your Minds"、"In Your Spirits" と名づけ、深部へと反応部位を移行させる計2時間半にわたる音盤&ビーツの冒険旅行。奏で編集される音盤の趣味のよさと幅広さに、長年レコード屋で買い集め愛好してきた氏の姿が浮かび、畏れ多くも親しみすら覚えちゃうもんな。


 HAIR STYLISTICS / Dynamic Hate (CD) 

 発売直後に手にいれ就寝前にかけてみたら、なんだかもぞもぞと落ちつかぬまま、部屋で聴くタイミングをつかめなかったこと約2ヶ月……中原氏が立ち寄ったという翌日に中目黒のチリドッグ屋チリタのBGMでかかってワオ。強烈な日光にくすんだTシャツの色あいというか、輸入VHSで観るエクスプロイテイション映画というか……一貫して不敵にたゆむアナログな味わいはそのままキープ。重心低めのイカした新鮮ビックリ・ビートがくり出され、鎮座ドープネスのラップも相性ばつぐん。目下、名盤 "Costom Cock Confused Death"(2004年)以来のリピート状態なのだ。つい先日Soundcloudにアップされた新曲 'Nagasaki Today (MIx 1)' にもシビれたぞ。
 


堀江博久 / At Grand Gallery (LP) 

 白髪の分量も増えYMO世代との仕事もへてすっかり貫禄づいた印象があるから、もっと渋い線でいくのかと想いきや、なんと多彩でリズミックな!  あのエクセントリック青年がまっすぐ年を重ねた、天然の堀江くんがそこにいた。なかでも第3曲 'The Boy Of Clown' のソウル様式とポップ感覚の鮮やかな折衷ぐあいは、他に類をみぬまさに独擅場。グレイト3の2002年曲「極限高地の蛇」でも聴ける、デイヴィッド・ボウイ 'Sound And Vision' 直系の折り重なるストリングス・シンセ技は、近ごろのマイブームとみた。軽妙でいて深い。曲それぞれがしっかり心に余韻を残すところはさすが。


 IKEBANA / When You Arrive There (CD) 

 ツイッターのタイムラインで友人が「ゆうれいザー」とカテゴライズしていて、うまいこというなと笑っちゃったけどさ。それほどまでに幽玄さが板についているんだな。6月半ばのリリースからしばらくは昼夜を問わず部屋を漂っていて、まさに浮遊の夏って感じ。ブレンディでつくった氷入りカフェオレとか飲みながら、よく浸ったものです。8月あたまに世田谷区代沢の教会で観たライヴなんか、夕暮れどきの冷房のきいた会堂のアンビエンスもあいまって、ちょっとうたた寝しちゃったり。生花のふたりの場合、演奏中のたたずまいと打ち上げのおしゃべりの落差がまたいいんだな(笑)。
 


 INC. / No World (LP) 

 きちんと期待に応えた初アルバム。ナイト・ジュエルと並ぶ、AOR&B不動の最高峰でしょ。ますますスノビッシュかつスタイリッシュ。全編をあえて抑えたトーンで統一したところにも、磨きぬいた美意識への自負心がうかがえる。ジャケのグルーミーな曇り空そのままの、空漠としたソフトネスとメロウネス。政情危うい不穏な時代ならではのスロウ・ジャムって気もするな。
 



 ☆パート2(後編)→BABY RECORDS' 2013 FAVES TOP 30 - Part 2 につづく。

2013年12月6日金曜日

アンビエントな通路

 昔なじみの街を歩いていると、ひんぱんに脳内でストリート・ヴューがオンになる。たとえば渋谷駅前のスクランブル交差点。じっさいは眼前にツタヤやスターバックスの入るキューフロントビルがそそり立っているとしても、信号待ちのあいだ頭のなかに投影されるのは、J・ブラックフットの1983年アルバム"City Slicker"のジャケットに似たかつての光景だ。



 西武百貨店A館B館のあいだから、井の頭通りの東急ハンズあたりにさしかかると、左前方の2階窓には黄色に赤文字の"TOWER RECORDS"のロゴが視界に入る。そのビル、ヴィレッジ80のたもとにはカルト映画や音楽ものにつよいヴィデオ屋がちょこんと建っている。我が知覚の曲直はともかく、たしかに見えてしまうのだ。まるでグーグルのストリート・ヴューで長らく更新されていない地域に、とっくにたたまれたはずの店が映しだされるように。 

 先日、映画までの時間をつぶそうと池袋駅周辺をぶらついた。80年代末から90年代半ばまで近場の西早稲田に住んでいたので、いまだに足が地理を覚えている。西武線の南口改札にほど近い西武百貨店本館の地下1階から、書店リブロのある別館に向かう連絡通路。その手前にきたとたん、脳内ストリート・ヴュー機能が作動した。ほんの短い通行時間にほっと息をつけるような、淡い間接照明の快い空間演出がなされている……はずなのに、記憶にエラーが生じてタイムスリップ体験がかなわない。そこに聴こえるはずの音がどうにも想いだせないのだ。たしか清流のせせらぎのような、小鳥のさえずりのような、いかにも90年代初頭らしいアンビエントな立体音響効果がしかけられていたのだが……。むなしくもそこはただ通りすぎるための無粋な廊下。記憶がよみがえらないかぎり、もうあの通路にはいけないのだろう。

  ところが今朝、YouTubeで1991年当時のアンビエント通路を捉えた動画を発見。往路(3:00〜3:02)のみならず復路(3:49〜3:53)も収録されている。移動時間がスキップする編集がなされ、聴こえるのはほんの断片。とはいえ、脳細胞にかろうじて効果音サンプルが追補された。つぎの池袋訪問でどうなるか試してみよう。

 1991 Tokyo Shopping Etc 東京買い物など (910819)

  この動画をアップしたライル・ヒロシ・サクソン氏のチャンネルは、他にも90年代初期東京の記録が充実で釘づけだ。

2013年10月23日水曜日

ドアをノックするときのフレイズ

 プリンスのごきげんな 'Play In The Sunshine'(1987年盤 "Sign '' The Times" 収録)の後半、ドラム〜木琴〜ギターの長いソロ/ブレイクの終わりにとびだすおなじみのフレイズ。

  このライヴ映像だと、8:43のところ。

 そう、ドアをノックするときの“あの”パターン。英語で 'Shave and a Haircut (, two bits)' というそうだ。いつもレコードに合わせて「♪ちんちろりんの、かっくん」なぞと口ずさむはいいが、ついさっきウィキペディアを見るまで呼び名や由来を知らなかったのさ。 'Popularity'の項にいろんな例が挙がっているけれど、なるほどボー・ディドリーのビートなんてそのまんまだし。

  きっぷを予約してある11月3日の爆音収穫祭プリンス/サイン・オブ・ザ・タイムズ』上映、楽しみだ。

2013年9月20日金曜日

ゴーゴーズのジーナ

 突然だが、ザ・ゴーゴーズの5人だったら、やっぱしドラムのジーナがキュートだろう。



 'Head Over Heels'のヴィデオのドラム・ブレイク(2:44)のジーナはなんかよい。高校に入りたてのヒットした1984年、テレビで観てぐっときた。


 現在は56歳だって。小柄ですてきなおばちゃんだ。

 そういえば、たしかジャームスの本『L.Aパンクの歴史 ジャームスの栄光と歴史』に、ゴーゴーズが男のグルーピーたち相手にめちゃくちゃをやっていた話が載っていたっけ。

2013年4月26日金曜日

カッコいい浅川マキ


  
  

 あの徹底してアングラでモノクロームなたたずまいが、好きな色といえばペパーミント・グリーンやインディゴだったりする自分にはあまりにも遠い気がしていた浅川マキ。だからレコード屋の棚でも素通りしていたし、訃報を目にしても「ユニークなひとが死んじゃったな」ぐらいの感想しかなかった。ところがつい最近、その距離がぐんと縮まったのさ。
 調べもので音楽雑誌のバックナンバーを眺めていたところ、なんとなく目にとまった紙ジャケ再発CDの記事。どうやら、浅川マキの80年代音原にはAORな曲もあるという。いまはYouTubeなんていう便利なスグレものがあるから、試しに検索してみたってわけ。するとどうだ。たまらなくアーベインで、まったくイカすじゃないかい。さらに探った結果、iPhoneのメモの欲しいCDリストに新たな4枚がくわわった。
 以下はちょいとばかし聴きかじり、ぐっときたお気に入りの5曲。そう、けっして遠い音楽じゃなかったのさ。Listen without prejudice.


浅川マキ / アメリカの夜


浅川マキ / Possession Obsession

なんとホール&オーツの1985年ヒット曲カヴァーだ。さらに次作『こぼれる黄金の砂』ではダリル・ホールのソロ曲'Dreamtime'もカヴァーしているから驚いちゃった。

浅川マキ / YS・ムーンライト


浅川マキ / Tokyoアパートメント


浅川マキ / ともだち

この曲はトリスタン・ホンジンガーも参加するニュー・ウェイヴ仕様。後藤次利制作の1983盤"Who's Knocking On My Door"収録なのさ。